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※「1.はじめに」のみ掲載。校正前のもの。引用等は精神医療(特集「医療観察法~改めて中身を問う」)96をご購入のうえ当該論文をご活用ください。

医療観察法における「社会復帰」の意味について―「『本法における医療』継続の担保措置としての『本法における医療』」の継続的提供状態としての「社会復帰」―

Examining the "Rehabilitation into society" mentioned in the Act for the Medical Treatment and Supervision of Insane and Quasi insane person who Cause Serious Harm(MTSA):“Rehabilitation into society” as a state in which “the medical treatment described in the MTSA” is continuously provided as collateral to continue “the medical treatment described in the MTSA”


樋澤 吉彦

 


1 はじめに
 筆者は拙著(樋澤 2017)を土台として、当該者の選択行為が「当該者自身の生命の毀損」に直結する蓋然性(自傷)に加えて、「社会の安全」にも影響を及ぼす蓋然性(他害)を有するという「医療的/社会的」特性が阻害要因となり「社会復帰」の実現が困難とされている「触法精神障害者」にまつわる法制度に関する国の検討会等の議事録、資料及び関連論考の収集・分析を通して、「触法精神障害者」の「社会復帰」の実際的な目的とその意味について、おおよそ3年の期間を設けて整理・検討を行うことを予定している(樋澤 2019-)。この問題関心の基底には、後述のとおり極めて曖昧な概念であり且つそれ自体では本来は強制的な介入の「免罪符」とはなりえない「社会復帰」を根拠として、精神保健福祉分野のソーシャルワーカー(精神保健福祉士、以下、PSW)の職能団体である「日本精神保健福祉士協会」(以下、協会)が「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(2003年7月10日成立。以下適宜、医療観察法または本法)に(名目上は反対の立場を明示しつつも)積極的な関与を表明し、本法における排他的職能(社会復帰調整官の実質的な職務要件)を獲得するに至ったという経緯がある。

 本稿はその端緒として、「社会復帰」という語のそもそもの定義、及び主にPSWが担うこととなった医療観察法における社会復帰調整官の役割の一つである「精神保健観察」が志向する「社会復帰」の語られ方について、若干の整理をしたものである。


研究業績

 

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